令和3年9月議会追加議案質疑 原稿

 

 

 議案第121号令和3年度一般会計補正予算について伺います。

 

 北九州市は学校における感染拡大予防対策事業に1億3千9百万円の予算案を提出しています。内容は、小、中、特別支援学校における児童生徒の新型コロナウイルス感染拡大防止を図るために、スクリーニング目的で実施するPCR検査に要する費用です。

 実施内容は、特別支援学校、基礎疾患を持つ児童生徒への毎月の検査、宿泊を伴う学校行事等に参加する児童生徒などへの検査、感染拡大期に児童生徒に陽性者が確認された場合、その学年全員の検査を実施するなどです。

 

 そこでお尋ねします。

 第一に、今回の事業によるPCR検査を受けることを児童生徒またはその保護者が拒否した場合、学校等は強制的に検査を受けさせるのでしょうか。またこの検査を拒否した場合に、無理やり唾液等の体液を採取し、検体として保管するとすれば、その法的根拠はあるのでしょうか、併せて教えてください。

 

 第二に、市内では8月盆明けの18日に229人の新型コロナ陽性者が報告され、9月1日のピークまで、一日約150人から200人の間で陽性者が報告されていました。しかし、9月2日以降一気に減り続け、9月21日の7人と激減しています。市教育員会は9月3日付けで保護者向けに、塾や習い事を控えるよう通知を出したため、公共施設以外で指導に当たる民間のスポーツクラブなどで混乱をきたしました。教育長も本会議において「言葉足らずだった」と答弁し、内容を修正したものを9月13日に再度保護者に通知しています。言葉足らずの通知を出したことは、8月の児童生徒の陽性者急拡大を受けて、新学期に向けて感染拡大を何とかしたいとの熱意からだと理解します。

今回の補正予算も、まさしく陽性者拡大が激増した時に何とかしたいと、苦肉の策で考えられたのかもしれませんが、現在、児童生徒の陽性者がほとんどない中で、緊急事態宣言が明ける予定の10月以降という時期から行うことは、費用対効果の面からもその必要性に疑問があります。今回の補正予算も市民の混乱を招き、「言葉足らずだった」と釈明することになるのではないかと懸念します。当該検査事業をこの時期に行う必要性について、見解をお聞かせください。

 

 第三に、PCR検査はごく少量のウィルスを検出できる程度まで増殖し、存在の有無を調べるもので、抗原検査と比べて精度が高いと言われていますが、それでもPCR検査の感度は70%程度と言われています。陰性でも感染の疑いが残り、また陽性でも感染していないとなる偽陽性の場合があります。市は、当該検査事業でのPCR陽性者については、再度医療機関での検査を求め、その結果で感染者かどうかを確定するとしています。

 今回の学校での検査は、スクリーニング目的で行われ、児童生徒の中での、無症状感染者を特定するために行われるものです。楽しみにしている修学旅行や、部活での一世一代の大事な試合前に行われる、まさに踏み絵です。絶対的といえる検査方法が存在しない中で、あくまで目安でしかないこの検査を、多くの児童生徒に行うことの教育的影響をどうお考えでしょうか。学校と、医療機関の2度の検査で陽性になったお子さんは、修学旅行に参加できません。どんなに悲しいことでしょうか。教育者が新たな分断を学校内に持ち込んではいけません。

現状では学校内で児童生徒に感染拡大がないのであれば、わざわざ、児童生徒が拒否することができない踏み絵を踏ませるようなことをして、ごく微小のウィルスをあぶり出し、これまた絶対ではない検査で感染者とされて、楽しみな学校行事に参加できなくなるなど、これが北九州方式でしょうか。児童生徒の学校生活における最大の思い出である修学旅行のチャンスを奪っていいのでしょうか。

今回の検査事業が学校現場に陽性者への差別や分断をもたらたすことになりはしないかと危惧しますが、見解を伺います。

 

第四に、PCR検査は多様な事業者が参入していますが、中には検査方法に問題のある事業者もあり、検査の精度の確保が課題になっています。厚生労働省PCR検査の精度管理マニュアルを示しています。PCR検査はごく微量のウィルスを増殖させるために、検体採取、識別、搬送、検査のどの段階においても、特段の管理体制が求められます。ことに、陰性・陽性の結果が、その子の人生を左右するようなことになれば最新の注意が必要です。

そこで、今回の検査事業における唾液等の検体採取においては、医師・看護師、保健師、教員のだれが行うのでしょうか。またその際、検体の取り違え、検体への異物の混入、検体へのバーコード貼付などの識別作業において、一貫した管理体制が各学校でとれるのか疑問です。只でさえ、度重なる学校行事の延期で、10月以降に行事が集中する学校現場において、この検査事業はかなりの負担になると危惧しています。当該検査事業における管理体制、検査の人員体制について見解を伺います。

 

第五に、PCR検査は大量の唾液を必要とします。以前のように口腔の粘膜をなぞるだけでは精度が落ちるため、試験管に一定量の唾液を延々とためなければなりません。私も検査を受けたことがあり、幸い陰性でしたが、20、30分間、唾液を縛りだすのにかなり苦労しました。

このように大人でも大変なPCR検査で児童生徒が大量の唾液を出すのにどれだけの心身の負担がかかるのか、はかり知れません。最近では児童生徒の学校内のクラスター感染が市内で報告されていない中、精度が絶対ではない検査で児童生徒の貴重な時間を奪い、そしてその結果、感染の負い目を児童生徒に負わせるようなやり方は、教育的にも間違いであります。当該検査事業における児童生徒の心身の負担について、教育長の見解を伺います。